グッドパエリア

日が日が暮れてくざわざわしてゆく、
夕餉(ゆうげ)のリズムに浮かされて。
彼も彼女も靴を鳴らすよ、
今夜は一体何を食べようかな。

手を叩くように、笑うように、しびれる料理を作らなきゃ。
最高のパエリアを。
さあさあ、始めよう、とりあえずスーツはコインロッカーに、
押しこんで、タクシーに乗る。

まず森の奥に、山菜を探しにいこう、
その前に、懐中電灯を買っておかなくちゃ、
いやまてよ、ATMで、お金を下ろしておかなくちゃ、
いやまてよ貯金がもうないんだったっけ。

手を叩くように、笑うように、競輪場にいくっきゃない。
最高のパエリアを。
さあさあ、始めよう、ヘビのような勝負師に変身しよう。
ヘイ、ババア!2−4に300円。

目をこすると、ストーブから焦げ臭い匂いがして、
ああそうか、灯油が切れちゃってる。
もっとロマンチックな夢を見ていたかったんだけど、
しょうがない、夢は選べない。

夜が明けたら車でいこう、海岸沿いのレストランへ。
最高のパエリアを。
そして味わおう、独りがどんなに寂しいかってことを。
そしたら、君に謝れるかも。
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