昨日のように

僕の話を聞いてくれる
あの人は哀しい女(ひと)だった
飲みかけのグラスに 虚を数えて暮す
僕のすべての愛は あの日においてきた

日々の暮しは荒れていた
うつろな瞳で男を誘い
つかのまの夢に 体ふるわせた
悲しく羽根もない小鳥のように

果てることのない この世の中で
果てることのない 人の流れの中
あの女(ひと)は いつわりだけが
味方だと つぶやいた

あの女の胸に 灯をつけるのは
マッチをするより 簡単さと
くわえ煙草の 煙りの中
一人の男がそんなふうに うそぶいた

くるはずのない 春の日射しのような
くるはずのない 倖せの中で
あの女(ひと)は 眠るように
死にたいと 泣いたんだ

もどれはしない この人生の
もどれはしない あの街角に
想い出だけが 昨日のように
僕の名前だけを 呼んでいた(昨日のように)
……
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