矢車草 ~夢二のおんな~

うしろ姿の女の背中に 細い径(みち)がある
径をたどれば女の胸には 涙の谷がある
忘れてくれなんて 言うから忘れない
矢車の矢車の花を一輪
もういちど夢ひとつ 咲かせてみたい

恋をなくした女の頬には 白い河がある
河をくだれば女の瞳に 涙の海がある
愛しすぎたことに どんな罪があるの
矢車の矢車の花は散っても
花びらよ風に乗り あなたに届け

思い出さがす女の心に 暗い坂がある
坂をのぼれば女の棲む町 涙の町がある
あなたが帰るまで 心に灯をともし
矢車の矢車の花の命を
いつまでもこの胸に 燃やして待つわ
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