お俊恋唄

「女は恋に生きるもの
憎らしいねぇ 新太郎さんは
夢まで見させて
女ごころを掴んでおいて
今は何処かの空の下
だっ嫌いだよ 旅鴉なんか」

忍び泣きして からだもやせて
結ぶ帯にも 女の泪
こんなわたしに したまま気まま
旅に出た人 旅に 旅に
旅に出た人 恨みはせぬが
思いすごしか 茶碗酒

ぬれた枕に 頬すり寄せて
呼んですがって 両手を合わせ
夢になりとも 逢いたいものと
泣けば雨風 泣けば 泣けば
泣けば雨風 夜明けのからす
女泣かせの 鐘がなる

「おんな心は情けの小枝
とまれば夜露もしのげるものを
それはどうして あの人には
判ってもらえないンだろうねぇ」

神にねがいを 新太郎さんに
茶だち塩だち お百度詣り
またの逢う瀬を 命にかけて
待ってこがれて 待って 待って
待ってこがれて 五年はおろか
柳新芽の 枯れるまで
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