鴛鴦道中

「可笑(おか)しいねえ
年も違えば故郷も違う
もとは他人の男と女が
今では夫婦(めおと) 鴛鴦ぐらし
お前さん寒くはないかい
それとも想い出しているのかい
ふるさとをさ」

堅気育ちも 重なる旅に
いつか外れて 無宿者
知らぬ他国の たそがれ時は
俺も泣きたい ことばかり

染まぬ縁談(はなし)に 故郷をとんで
娘ざかりを 茶屋ぐらし
茶碗酒なら 負けないけれど
人情からめば もろくなる

「あんなやくざみたいな男の
どこがよくって惚れたのさって
世間の人は嗤うけれど
お前さんのホントの値打ちは
この私が一番よく知っているのさ
お前さんだったら
一緒に死ねるもんねえ」

かたちばかりの おしどり姿
ならぶ草鞋(わらじ)に 風が吹く
浮世あぶれた やくざな旅は
どこで散るやら 果てるやら

泣くも笑うも ふところ次第
もとでなくした その時は
遠慮いらずの 女房じゃないか
丁とはりゃんせ わしが身を
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