大利根しぐれ

利根のしぐれか 瞼が濡れる
夢はどこかへ 落し差し
武士のこころは 忘れはせぬが
風にまかせた 枯れ落葉
浮世流転の 浮世流転の
平手造酒

「江戸は神田
お玉ヶ池の千葉道場で
昔、磨いたこの腕を
買われてなった用心棒―
これが平手の…なれの果てだ」

受けた恩義は 白刃で返す
野暮な渡世の かえし業(わざ)
喧嘩沙汰なら 命もままよ
賭けて裏目が 出ようとも
義理にゃ勝てない 義理にゃ勝てない
平手造酒

「無器用に生きた平手造酒
痩せても枯れても 武士は武士
小さな誇りと脇差し抱いて
どこかへ消えて行くだけさ」

酒に溺れた 男の明日を
空の徳利が 知るものか
どうせこの道ァ あの世とやらへ
啼くな葦切(よしきり) 灯(ひ)のかげで
影もやつれた 影もやつれた
平手造酒
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