吉良の仁吉

「やくざ稼業は
因果なもンでございます
まして 渡世の掟は
きびしいもンでございます
男と男の杯を
守り通して恋女房に
泣いて持たせた離縁状
吉良の仁吉は
男の中の男でございます」

海道名物 数あれど
三河音頭に 打太鼓
ちょいと太田の 仁吉どん
後ろ姿の粋な事

吉良の港は おぼろ月
泣けば乱れる 黒髪の
赤いてがらも 痛ましや
お菊十八 恋女房

引くに引かれぬ 意地の道
止めてくれるな 名がすたる
いやな渡世の 一本刀
辛い訣れを なぜ切らぬ

嫁と呼ばれて まだ三月
ほんに儚い 夢のあと
行かせともなや 荒神山へ
行けば血の雨 涙雨
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