妻恋道中

「堅気嫌ってやくざになって
野暮は承知の喧嘩沙汰
飽きも飽かれもしねぇ夫婦(みょうと)の仲も
俺ァこの脇差(どす)で切ってしまったんだ
馬鹿は死んでも なおらねえ」

好いた女房に 三下(みくだ)り半を
投げて長脇差(ながどす) 永の旅
怨むまいぞえ 俺等のことは
またの浮世で 逢うまでは

惚れていながら 惚れない素振り
それがやくざの 恋とやら
二度と添うまい 街道がらす
阿呆阿呆で 旅ぐらし

「意地を通すか人情(なさけ)をとるか
二つに一つの返答は
男なりゃこそ胸のうち
どうせこの世は一天地六(いってんちろく)
出たとこ勝負と賽の目ふれば
お釈迦様さえ横をむく」

泣いてなるかと 心に誓や
誓う矢先に またほろり
馬鹿を承知の 俺等の胸を
何故に泣かすか 今朝の風
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