高田屋嘉兵衛

国は何処かと聞かれたら
日本人だと 胸を張る
男、高田屋嘉兵衛どん
此処はエトロフ千島の沖で
波の飛沫を受けて立つ

「ロシアの艦長さん、如何にもあなたがたの上官ゴロヴニン中佐は、
松前藩の役人衆の手に捕らえられました。
それは何故だかご存知でございましょう、あなたがたがエトロフ島に
不法上陸をなされ剰え発砲騒ぎをおこされたからでござります。
若しどうしても中佐を帰して欲しいと仰有るなら今後ロシアのお国が、
エトロフやクナシリには決して手出しをしないとお誓いなされ、
さすりゃ高田屋嘉兵衛、命にかえても将軍さまにかけ合って進ぜましょう。
はばかり乍らこのエトロフは、この高田屋が開拓をした島でござります。
いいえ、さ!日本の領土でござりますわい。」

顔は笑っているけれど
度胸千両の瞳の光り
男、高田屋嘉兵衛どん
捕えられても首斬られても
日本の領土は渡されぬ

「おう、お前達よ元気じゃったか、一年半ぶりじゃのう、
儂はロシアの牢屋につながれている時、
しみじみ国の淡路や函館が恋しかったわい、しかしロシアがあやまりを
認める迄は儂は死んでも帰らぬと頑張った、
さあ、これで日本とロシアの紛争も治まった、
これからは皆大きな顔して海の仕事に精がだせるぞよ」

花の明治にさきがけて
港 函館 春を呼ぶ
男、高田屋嘉兵衛どん
夢は故郷の淡路の島か
月の鳴戸のうず汐か
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