人情桧舞台

寄らば斬るぞと 大見得切れど
恋も人情も 斬れませぬ
春が来たのに 塗る白粉が
やけに冷たい 楽屋うら
あゝ檜舞台は まだ遠い

客が喜ぶ 芝居の心
それが掴めぬ この辛さ
月を見ながら 歩いた夜は
人も浮世も 冷たくて
あゝ凍りつくような 影法師

人の情が わからぬようじゃ
檜舞台は 踏めやせぬ
剣がきらめき 火花が咲いた
男命の 花道に
あゝひびく出囃子 本調子
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