街へ

どしゃぶりの雨の中
タクシーを降りて僕は一人
想い出の沢山しみこんだ
表参道を歩いている
あれはそうもう何年も前
やるせない想いを友として
都会に自分をなじませようと
原宿あたりへやってきた

その日も雨模様で
かすかに山手線を走る
電車の音は心地よく
何故か気持ちも安らいで
この街の唄でも
作る日がくればいい

その頃はまだ若者も
あふれる程の人数はなく
ほんのひとかたまりの芸術家きどりが
明日について熱弁をふるっていた
時代を変えるのは常に青春で
老いた常識より はるかに強く
たとえば嵐にのみこまれても
歴史はそれを見逃がさないだろう

見えない何かに向って
僕等は進もうとした
あの時信じたものは
ビートルズやボブ・ディランの唄
住みつかなくとも
愛せる街だった

愛した女もいる
恋に破れた事もある
なぐさめたりなぐさめられたり
それも大きな一瞬だった
原宿表参道は誰にも
語られなかったドラマを
なつかしい人がやって来ると
そっと話しかけてくれるに違いない

あなたの人生はいかが
若さはホロ苦いネ

時にはたずねておいで
逢えたら笑顔でむかえよう
変わってしまったのは
街だけではない筈さ
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