夕立

鳴かないように 響かないように
悪魔は声をひそめ 肩のあたりに手をやった
包みこまれた 刃ものは鈍く
このもうろうとした行き先に誰もいませんように

そつなくふるまうには十分すぎるはずなのに
ここに注いだ欲望はすいこまれていく

ふるえるものは『幸せ』か『うらみごと』か
このすべてはうつしだした鏡の中

見下ろしていた 疑った空
雨ぐもにつきささった やわらかい夏
夕立はうなる 心をにごしてく
深い底(みぞ)に沈んでいった泥をはこぶ

動揺をかくせない 満たされたはずなのに
もっともっとどこかへ 私を追いやってしまって

こわれるものは『奇跡(まほう)』か『あきらめ』か
つかまれた両手をはなして もとに戻して

飛ばないように集めた空白
退屈を閉じこめたものは もうここにはない
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