ムスカリの花

思い描き続けてた僕らの青い色をした地図は
目印だけを書いてそのままで
目的地までの道を何度も想像して
そこから先は何も書き込まなかった

自分宛に届いた キレイな文字の絵葉書
見つめるとやさしいしい風がほら 時計の針を戻してく
そういえば忘れていた あの日から数えて
一万日経った日にまた逢おうと 君と交わした約束

そういや 思い思いに夢を語りあってたんだっけ
話してたとおりにはなったのかな
僕はといえば相も変わらず東京にぶら下がり
少し色の薄くなった夢をみてる

風がページをめくるように 想い出が押し寄せる
気付けば懐かしいあの笑顔 こっちにおいでと 手を振っている
ずっと隣を歩いていた 朝も帰りも一緒で
このまま同じ横顔を見て 死ぬのもいいなと思っていた

どうして つないだ手を離した時そのままにしたんだろう
震える体をただ見つめていた
君がこぼした涙を受け止めることが僕の
役目なんだと小さく誓ってたのに

思い描き続けてた僕らの青い色をした地図は
目印だけを書いてそのままで
目的地までの道を何度も想像して
それより先は誰もわからないけど

いつか僕らが知らないこの世界のどこかで
描いてた地図がそっと輝きだして
彩るように並んだ一万本の花たちが
やわらかな光に照らされ揺れている

君の歩く道も、照らされますように
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