Metro

終電間際だった
偶然乗り合わせていた
かつて恋人だった 少し疲れたあなた
時間が 迷う私を置いてきぼりに 連れ去った
やわらかな感覚など何処かへ

抱かれてもいいのは愛していないから

あなたとなら あなたとなら そんな夢見ていた頃
私はまだ未熟だった 若過ぎる葡萄酒(ワイン)のように

行き交うメトロで 行き交うメトロで 私 過去を漂う
拙い 優しい恋の文
綴った駅で降りただけ

シアワセだったんだかよく思い出せないけど
だけどまだ覚えてる あなたと聞いた雨音 しとしと
かつて暮した小さな部屋で
狡いのよ あなたは困ると黙ったままで

抱かれてもいいけど愛していないから

ビロードのような濃厚な闇と酔いに誘われ眠れば
朝になれば 朝になれば また独りで人波紛れる

行き交うメトロで 行き交うメトロで 心 今も漂う
私からはまだ電話はしない
したくない
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