通りすがりの 蛇の目傘
すそを濡らして走り雨
カナカナ カナカナ 蜩と
泣いて一日 また過ぎる

貴女がくれた 吊り忍
今も枯れずにあるものを
カタカタ カタカタ はたを織る
糸も心も つづれ織り

また降る雨の音に似て
重なり聞こゆる 下駄の音
カラカラ カラカラ 坂道を
見知らぬ人が ゆきすぎる

半ば開いた 連子窓
いつもと同じ 石の道
カナカナ カナカナ 蜩と
二度と戻らぬ 日をすごす

カナカナ カナカナ 蜩と
二度と戻らぬ 日をすごす
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