寒北斗

幾つになっても郷土へ帰るのはいいもんだ
照れ臭くってあたたかくっていいもんだ
土産といってもこの躰 折りから郷土は煤払い

ひと息ついたら親父は美味そうに煮凝を喰う
お袋は炊事場で酒を煮る
子供の頃から動いてる 柱時計が時を打つ

昔晦日に餅もなく 子供の顔をみつめてた
あなたの気持わかる程 大人になって去年今年

親父は時計に向ってひとり言 此頃合わないぞとひとり言
知ってか知らずかまな板の 遠くで葱切る音がする

幾つになってお袋には子供は子供
酒飲むなの躰こわすなの小言いう
小言といってもこの耳に 何故か今夜は心地よい

二本目の徳利を差出せば お袋は座ったまま眠ってる
胸をつかれて不覚にも 涙ひとつこぼれました

ふと仰ぎ見る古里の 窓に横たう天の川
お前の意志を曲ぐるなと はげますごとき寒北斗

たった今決心がつきました 年があけたら嫁をもらいます
知ってか知らずか床の間で ゆらりと揺れた福寿草
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