加速度

別れの電話は雨の日の午後
受話器の向うできみは確かに
雨にうたれ声もたてずに泣いていた
「最後のコインが今落ちたから
今迄のすべてがあと3分ね」って
きみはとぎれがちに 小さくつぶやいた

スローモーションで時が倒れてゆく
言葉さえ塞いで
ごらん愛の素顔は 2つの世界の
間で揺れる シーソーゲーム
喜びと……悲しみと……

最後の電話がコトリと切れて
静かに僕の手に残ったものは
発信音と穏やかな雨のさざめき
途絶える直前の君の優しさは
最後に ピリオド打たなかったこと
まるで悲鳴の様に 言いかけた「それから」って

自分の重みに耐え切れず落ちてゆく
ガラス窓のしずく
あたかも二人の加速度の様に
悲しみを集めて
ほらひとつ またひとつ
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