波紋

また ひとつ 其方が口に出した
余が ひとつ 其方に受け返した
汲んだ水が 流砂に姿を変へる

たなごころの隙間より 滑り落つその様を
朧げに 想ひ返す 夕月よ

燃ゆる幻に 現は死せり
帰路無き旅路へと
されど穏やかに 横たふそれは
惑ひを知らざる様子

また ひとつ 天道が海に落ちた
また ひとつ 虚実が共に落ちた
己んだ鼓動 生まれし波紋 震へた

心憂しき五月雨に 濡れまひと傘差した
朧げに 想ひ返す 艶姿
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