都府楼

はじめは「逢初め川」といい
出会って「思い川」という
大宰府の秋はいにしえ川の 白鷺と銀杏黄葉
朱の楼門 朱の橋 池の水面に 空の青
白い手を合わせて君は ため息で歌うように

人の心が いつまでも 変わらない ものなら
人の世の 哀しみの多くは 消えると言った
きっと
千年あとまでも 想い続けると
樟の葉の緑に 恋を託したと

秋思う祭りの宵に 独り来て恋を訪ねる
大宰府の色は観世音寺の 白萩と尾花 鐘の音
ぼくの心の鷽の鳥 まことに替える間もあらで
あの恋にほふったものは 君の手とあの真心と

人の心の 移ろいは 生きて行く 術なら
人の世の 哀しみの多くは そこで生まれる
いまさらに
切なくて切なくて 君を歌えば
君の言葉だけが 真実になる
千年あとまでも 想い続けると
樟の樹の生命に 恋を託したと

月山に 刻を尋ねる 神官の 白衣は白く
篝火は 赤々と燃え 果てしなく 赤々と燃え

千年変わらない 月の光が
都府楼の甍を 闇に浮かべた
千年あとまでも 想い続けると
あの月の光に 恋を託した
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