世界で一番小さな海よ

光に満ちたあの芝生で
穴の空いた風船をふくらませようと 必死だった
気の遠くなるような その静かな作業だけが 賑わいへの抵抗だった
遊んでもらえぬ子供は つま先をじっと見つめたままで
頭でかなしみを処理しようとするけど
心が首を横に振る 飴玉をゆっくり味わうように
ひとり 生きてく苦味を知るしかない

体を震わせ眠る猫には 鳴き声にならぬ過去がある
忘れ方を知らない僕らは 背負わされた闇 光に変えてゆけるかなぁ

隠された上履き 見つかったって
悲しみは終わらないから 探さなかった
心が軋む音 説明したってどうせ伝わらないから 話さなかった
何度 手を伸ばしたって 振り向かぬ背中があることを知り
時に未来に唾を吐くけれど
ひねくれたところで僕ら 所詮 純粋を捨てきれないのさ
誰もが子宮の温もりにくるまれてた

すすり泣くような風を伴奏に アイノウタを響かせたよ
誰かに聞いてほしいのに
誰にも聞こえない声で アイノウタを響かせたよ

過去は変わらず 未来はわからず しがみつこうとすれば
不安が希望を追いかけまわす

暗闇の中 冷たい手すりに連れていかれるように歩いた
何を目がけて進んでるのか
わからなくなって 気づいたらしゃがみこんでた
素直に愛が欲しいと言えたなら 虚栄を羽織らずにすむのに…
世界で一番小さな海よ あなたは美しい あなたは嘘をつかぬから
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