凡人−散歩き−

うらやましきはカラス共に
我が肉食えやと言いたる詩人よ
ああ なぜに俺は家の中で暖まりながら
またゴロゴロとしてあくびして
不真面目にこの俺はいつも
「おお、我が余命いく日なりや。」と
老爺を気取りて指おり数え、
ああ俺はあわれな凡人よ

―明日も笑顔で人と話し―

座る電車の座席の前に
手すりにもたるる老婆がひとり
ああ 恐ろしき世間の前に
俺は座席を立つものよ

楽しげに ああ 人と会い、笑い、
希望は失せたが死ねぬ身の
せめては余命いくばくなりや、と老爺を気取り、
ふとんで涙をしぼりて
町に出、笑い、凡人ああここに有り

この俺はいつも
「おお、我が余命 いく日なりや。」と
いつか老爺となる日を待つ身となった
この俺はあわれな凡人よ

俺は生活を追い求む、
世間に食われ命をけずり、
孤高のうちに死すより
俗なる我が世間に遊ぶものよ、
今日も町に出、手足取られ導びかれ、
我が同類と
もたれ合い、あざけり合いて、
凡人の意地と意地、
命がけなるそぞろ歩きよ

死んだら、俺が死んだら
立派な墓を
人のあわれを誘う悲しい墓を建ててくれ

俺は歩く「金」と「平和」と「女」と「虚名」を求め
世間と手を取り合いて散歩き
今日も世間を散歩きよ
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