夜明けの物語

あの日も 冷たい 小雨が
通りを 濡らしてた

お前に 声かけた 行きずりの 狭い店
サキソフォンが 歌ってた

二人の 出会いは 誰かの
小意気な はからいか

明かりに せかされて
飛び込んだ 部屋の中
波の音も踊ってた

夜明けの物語 小さな物語
強く抱きあえば 深く求めれば
何もかも終わるような 壊れやすい
ふたりの夜だった

帰らぬ 男を 待ってた
お前の いじらしさ

心の 片隅に 傷痕を もうひとつ
かかえさせただけだった

別れる 運命と 知りつつ
勝てない 悔しさよ

涙を こらえてる 黒髪を なでるように
風の音が泣いていた

夜明けの物語 小さな物語
どこかさみしげな どこかはかなげな
横顔をしてたお前

夜明けの物語 小さな物語
どんな空を見て どんな夢を見て
どこで暮らしてるだろう
港町の 短い 夢だった

夜明けの物語 小さな物語
遠いこの町で 遠いこの海で
どれだけ恋してみても
お前だけを 今でも 忘れない
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