こぼれ紅

百の花より 一つの花に
賭けて 咲くのが 女の真実(まこと)
築地河岸(がし)から 大川づたい
人目忍んで 寄せ合う肩に
月の雫か こぼれ紅

針の筵(むしろ)を 踏むより辛い
芸の厳しさ 険しさ深さ
成らぬ恋ゆえ 身も世も捨てて
合わせ鏡に 映した夢は
華の舞台の 晴れ姿

菊の絵柄を 情けで染めて
意地と涙で 仕立てた単衣(ひとえ)
袖を通した 姿が見える
浪花名代の 船乗り込みの
せめて名残りの 遠囃子
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