さがの路だより

その後お変わり ございませんか
お身を案じて おりますと
他人行儀な 言葉をつらね
涙で絵葉書 出す女
ここは さがの路 旅の宿
どこの お寺の 鐘なのか
人恋しさに 鳴りまする

あなた様には二年と三月
世話を焼かせる ことばかり
何のお礼も 出来ないままに
お暇乞(いとまご)いのみ 申します
秋のさがの路 なぜ悲し
恋にはぐれて 女郎化
はらはら風に 散りまする

所番地も差し出し人も
名さえ書かない 便りなら
きっとお宅じゃ 間抜けな人と
嘲(わら)ってすませて くれるでしょ
時雨さがの路 ひとり旅
明日(あした)発とうか やめようか
うつろな心 揺れまする
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