海原の人魚

わたしを初めて 抱いた人は
わたしのためなら 死ねると言った
わたしは笑って 少しだけ泣いて
木影に座って 髪をほどいた

碧い寝息は 明日を夢見て
花が咲くのも 待てずに舵を取った

空がどれほど高いのか
海の彼方で
月は鯨と泳ぐのか
どこまで独りで 飛べるのか

若い力は あふれ出した

あなたが初めて 抱いた人は
あなたの背中に 甘えて泣いた?
わたしの背中に羽根などなくて
星は遠くで 瞬くばかり

夜明けの鐘が 愛しくそっと
全てを消せるわけでもないから

空がどれほど高いのか
海の彼方で
月は鯨と泳ぐのか
想い出す嘘もあるけれど

新しい朝を 全部あげる

わたしなんか
死ねばいいと 想ってた
でもどこかで
わたしだけが
生きのびることだけ
信じてきた

空がどれほど高いのか
海の彼方で
誰が泣いていたのかさえ
ここまで私は 流されて

濡れた人魚は 愛を見た

トゥルラッタ トゥルトゥル ラッタ
消えないにおいと
新しいにおいと
愛したにおいと
愛すべき あなたと
×