男の真夜中

男はときどき 夜更けになると
過去へと 旅することがある
グラスに残した 氷をゆすり
やさしい女へと 逢いに行く
黒い瞳よ 白いうなじよ
紅いくちびる 細い指先

あんなにふるえた あんなに泣いた
どうして 別れてしまったの
すべてを投げだし いのちを賭けて
愛したはずの 女なのに
髪のかおりよ 胸のぬくみよ
耳をくすぐる あまい言葉よ

酒場の片すみ タバコをつけて
ぼんやり煙を 追いかける
だれよりすてきな 恋人がいた
ゆられて ゆれて 逢いに行く
酒は男の ざんげなのかい
バラのかおりよ 夢の星くず
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