あんたの春

あんたの春は 嘘ばっかりや
春には帰ると いいながら
帰って来た試(ためし)が あるかいな
尻無川(しりなしがわ)の 川尻(かわじり)で
ポンポン船の 音聞きながら
好きや 好きやというたのも
あれもやっぱり 嘘やろう
もう待てへんで 待つかいな

通天閣の 灯(ひ)を忘れたか
千日前やら 中の島
歩いたこと おぼえてへんのやろ
あの子ら末(すえ)は 女夫(めおと)やと
噂を立てた 嫌われもんの
角(かど)の酒屋の 後家(ごけ)はんが
可哀そうやと 親切に
縁談もって 来てくれた

いつまで阿呆な 夢みてる気や
ジェームス・ディーンに 憧(あこ)がれて
笑わせるで 荒野(こうや)を目指すやて
吉三郎(きっさぶろう)の おっちゃんが
そろそろ歳(とし)や 夜店もつらい
ワイの得意の 淡呵売(たんかばい)
アイツだけには 仕込みたい
帰って来いと いうてはる
×