父娘船

潮のしぶきが 沁みとおる
ゴムの合羽の 七分袖
父さん舵取り たのんだよ
船の仕切りは まかせておきな
母さん形見の お守り抱いて
ヨイショと漕ぎ出す 父娘船

花もはじらう 年頃を
紅もひかずに 束ね髪
極楽トンボの 兄ちゃんが
島へ帰って くるその日まで
父さん二人で 力を合わせ
ヨイショと乗り切る 父娘船

海の青さが むらさきに
変わる潮目が 勝負だよ
父さんゆずりの 肝っ玉
嫁のはなし縁談にゃ 片眼をつぶり
舳先で群れ飛ぶ 鴎の唄で
ヨイショと網引く 父娘船
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