白い手袋

汽車に乗る時に 俺の肩に手をのせて
たったひとこと 大丈夫よ と言っただけだ
それで別れた 窓にゆれた あの子の
白い手袋が やけに目にうかぶ

こわい東京で どんな仕事してるのか
気にはなったが 大丈夫か と訊いただけだ
それで帰した おさな顔も いとしく
ぬれた眸のそこに 嘘はない筈だ

いのちある限り 通うこころ変わらぬと
誓い交した 大丈夫だ と 俺は思う
それでいいのだ 遠く消えた あの子の
白い手袋が 胸にまた匂う
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