北都

形見にくれた黒百合の
香りは君の すすり泣き
そんな気がして 戻ってきたが
北の都は噂も枯れて
思えど逢えぬ まぼろしばかり

お酒を断って しあわせを
祈ると言って くてた女
君によく似た リラ色月が
眉をぬらして 北一条の
並木にかかる 切ない夜だ

戻せるならば いま一度
昔へ廻れ 時計台
長い黒髪 この俺の手に
そっと巻きつけさよなら告げた
涙の顔が ただなつかしい
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