蛍舟

葦の葉かげに 灯りを点す
あれは潮来の 蛍舟
誘い上手と 誘われ上手
ふたり合わせた 命火が
溶けてもつれて ゆらゆらゆれて
天の 天の 天の川原の 星になる

針のいらない つり糸たれて
夢を釣るのが 蛍舟
舟の生け簀で 冷やした夜酒
飲んで唄って また飲んで
忘れましょうよ ゆらゆらゆれて
つらい つらい つらい浮世の いざこざは

恋は蛍火 短かい夜の
闇にただよう 蛍舟
逢えば手軽に 脱がせた上衣
なぜか帰りは 着せにくい
青い嘆きに ゆらゆらゆれて
舟の 舟の 舟の水棹が 咽び泣く
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