しぐれ宿

蛇の目の傘に 揃いの浴衣
寒くないかと 抱きよせる
優しすぎます 今夜のあなた
旅に出ようと 言ったのも
理由がありそな ああしぐれ宿

この帯よりも 短い夜は
線香花火の 恋の花
嫌よいやです さよならなんて
雨のしずくの この音は
恋のいのちを ああ刻む音

躯に沁みた あなたの匂い
朝の湯舟に まだ残る
これでいいのよ 幸せなのよ
夢にすがって 春を待つ
しのぶ女の ああしぐれ宿
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