賢島の女

うしろ向きに肩を寄せて
「抱いて」とささやく 吐息が甘い
島で生まれて 都会を知らぬ
うぶな真珠の やさ肌に
炎がねむる 賢島の女

波も立てず 海は暮れて
筏の鴎も 塒に帰る
星のまばたき 聞こえてくると
耳に両手を 当てながら
恋唄うたう 洗い髪の女

舟で帰る 君を送り
また逢おうねと 思わず呼んだ
朝の英虞湾 巡航船の
白いドレスを 吹きなぶる
潮風にくい 賢島の女
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