風歌い

サンジェロームの村では 風歌いと人は呼ぶ
彼は幸せを運ぶミュージシャン
どこから来るのか どこへ行くのか
空の彼方の歌う天使か
風歌い 夢見る乙女の憧れ

秋深き夜は焚火を囲んで
さすらう詩人の歌う姿に
うら若きジュリーの 胸は震える
甘く優しい詩人の歌に
風歌い 夢見るジュリーは幸せ

だけどある日のこと
ジュリーは彼の歌にあわれ恋の行方の終わりを知る
馬に乗り風歌いが谷間に消えたその時
命かけたジュリーの恋は消えた
風歌い もう君は帰ってこないのか

陽の射しこむ部屋で ジュリーはもう目覚めない
小川のほとりの墓に導く
その時誰か云う
丘の頂きに確かに白い馬にまたがる彼を見たようだ
風歌い 哀れなジュリーは死んだ

そして今 この話もすでに昔
もう今では思い出す人もいない
うなずきながら 聴いてくれる人もいない
今はもうポエジーもジュリーも夢もない
夏、冬の風に 歌う人もいない

風よ泣け 風よ泣け 良き時代は終わりぬ
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