木曽の御岳・岳次郎

破れ合羽に 木曽路はしぐれ
惚れたあの娘(こ)の なみだ雨
呼んでみたとて 届きはせぬに
呼べと夜鴉(よがらす) 二声三声
木曽の御岳・岳次郎
せめて 泊まりは ア……ア妻籠宿(つまごじゅく)

「木曽のナァー仲乗りさん
木曽の御岳さんはナンジャラホィ
夏でも寒いヨイヨイヨイ
ハァーヨイヨイヨイノ ヨイヨイヨイ」

恩義返しに 命をかけて
結ぶ草鞋(わらじ)も男ゆえ
意地の鯉口(こいくち) ぷっつり切って
馬鹿を承知の 長脇差(ながどす)仁義
木曽の御岳・岳次郎
落葉ちるちる ア……ア三度笠

娘ざかりを 赦(ゆる)せと詫(わ)びりゃ
風にこぼれる 紅つばき
戻り旅なら 嬉かろうに
塒(ねぐら)持たない 一本どっこ
木曽の御岳・岳次郎
明日は馬籠(まごめ)か ア……ア雲にきけ
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