大阪行きは何番ホーム

19の頃だったと思うけれど 家を出る事に夢をたくして
1人きりで暮らしてみようと 希望に満ちていた時があった

たとえ都会の片隅であろうとも 何かが起こりそうな気がして
後ろ髪をひかれる想いを 明日のために絶ち切ってしまった

恋に破れるむなしさで 酒におぼれてしまった事もある
人を信じるはかなさが 心の形を少し変えてしまった

愛をむさぼる気持ちのまま 1人の女との生活が始まり
幸福という仮の住いに 子供の泣き声まで加わっていた

外の景色が変わって行く中で
人とのかかわりがわずらわしくなり
1人の男であった筈だと 真実を隠したまま旅に出た

家を捨てたんじゃなかったのか
家を捨てたんじゃなかったのか

自然である事の不自然さは 流行という名にもみ消され
流されるままにたどり着いたのは
新しい女とのめぐり会いだった

女は男より賢かったけれど 男は愚かさに身を任すだけ
何故愛したのかと問われても
ただ押し黙るだけになっていた

この世の中に美しさがあるのなら
きれいな事の方を選ぼうと
やさしさや思いやりを投げ出して
二人は違う旅に出て行った

家を捨てたんじゃなかったのか
家を捨てたんじゃなかったのか

今 東京駅に立ち尽す僕は 長すぎる人生の繰り返しと同じ
大阪行きの電車は何番ホーム
繰り返し 繰り返し 旅に出ている
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