漁火恋歌

指をのばせば この手に届く
思いすごしの 夢でした
北のはずれの 岬宿
波の間に間に 哀しく揺れる
……あの漁火は
女のため息 恋あかり

あなたまかせの 倖せなんて
しょせん片道 砂の道
頬にうす紅 さしたなら
胸のすき間を うずめてくれる
……あの漁火に
女がつぶやく ひとり言

塩のつぶてに 打ち上げられて
肩をよせ合う さくら貝
こころ流れ木 夜(よ)もすがら
海に抱かれて 泣くだけ泣いて
……あの漁火と
女の明日を みつけたい
×