キミノカケラ

サビついたベンチの砂を手で払って
君が嫌そうに座った それを見て笑った

あの頃の景色は 桜がキレイで
君と何度も見上げた
君を何度となく見た

今年もまた同じ場所に二人で行こうね
そう言って君とはぐれたんだ

いつの間に君を見失ってしまったんだろう
夜空に浮かぶ月を見ながら思った
振り返る度にキミノカケラを拾って行く
どれほどに君を愛していたんだろう

突然君からのメールが届いた
ためらう余地もなかった それを見て黙った
「桜がキレイな季節になりました」
ヨソイキな言葉で 面影はなかった

久しぶりにあの場所に初めて一人でこの足で行ってみたくなった

僕はまだ君を思い出にはしたくなかった
サクラノカケラと共に景色が剥がれた
君の心はもう 昔の恋の一つになってた
どれほどに僕は愛されてたんだろう

すれ違う恋人が 桜を見上げている
僕はそれを見ていても 淋しくはならなかった

サビついたベンチは塗りかえられていた
もう大丈夫だよと それを見て笑った
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