秋爽

運命と信じた熱い空の下で
痛いほど抱き合って潮騒も焦がした
一瞬目が眩んで揺れた陽炎たち
波音数える君が遠くに見えた

ああ 眩しすぎた風景はきっと
幻さとつぶやく秋蝉(あき)の声

波間に消えた想い出は君と
今もどこかで生きていますか?
言葉少なに去っていった肩を
季節外れの雨が叩き続けた

ずっとこのままで…と 言葉遮(さえぎ)った
困ったような横顔 冷やし撫でる海風
夕日が切り取った砂の足跡たち
一つずつさらわれ あの夏も消えてった

ねぇ君は何を忘れられるの?
高くて遠すぎる秋爽(あき)の空

ひとり訪ねた十月の海辺
凪いだ水面に季節(とき)を感じた
何も言えずにぼぅっと立ち尽くした
親指の砂は今も切なくきしむよ

人影消えた渚へもきっと
また新しい季節が巡る
秋冷の風が通り過ぎる前に
言いそびれていたサヨナラ波へ返すよ
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