にごりえ

灯り喰えて 沈む身に
似てやしないか ほてい草
胸をはだけて 団扇をつかう
ふてたつもりの 襟足に
昔しゃこれでも 花だよと
忍び泣きする 艶ぼくろ

落ちてもがけば もがくほど
はまる深みの 泥地獄
恋だ愛だとほざきなさんな
ここは命の切り売りで
その日 その日を生きている
泪女の 吹き溜り

飲んで騒いで いるときは
みんな殿様 華族さま
それでいいのさ このにごりえに
まことなんかは 要らないが
帰るあなたに 被せかける
羽織 重たい 朝もある
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