椿散る宿

瀬音さみしい 湯の宿に
みれんと云う名の 荷物をひとつ
捨てに来たのと 涙ぐむ
やせた女の ほつれ髪(げ)に
椿散る 散る 湯の宿かなし

そっとつぎたす お酒にも
おもい切れない 面影浮ぶ
せめて酔せて あの人を
忘れさせてと むせび泣く
椿散る 散る 湯の宿かなし

どこかわびしい 三味(じゃみ)の音(ね)が
あれた心を いやしてくれる
水流れる 花でさえ
別れ惜しんで 浮きしずみ
椿散る 散る 湯の宿かなし
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