最終電車

最終電車に乗る。
冷たい車内は白い光にみたされながら、
ゆっくりと動き出していく。
ガラスの向こう側に、
さっき君といた街の灯りがちいさくなるよ。
欠けた月だけ追いかけてる。

黒い空を僕を乗せて、ずっと走りつづけていく―。

離れても、遠くても、全て君に向かっていく。
つぎはぎの祈りでも、ひとつひとつ叶うように。
何ひとつ迷わずに君が眠っていたらいい。
なんとなく、うれしくて、
おどけながら僕はちいさく手をふるよ。

切符をにぎりしめて君の事を想う。
駅に着くたび人影も消え、
僕だけが独り残ってる。
きしむ音で、少しだけ胸が苦しくて、
帰りにくれたアメが苦いや。
欠けた月のカケラみたいだ。

窓に楽しそうな日々が、ずっと流れつづけていく―。

離れても、遠くても、全て君に向かっていく。
ほころびた願いでも、ひとつひとつ届くように。
何ひとつ怯えずに、君が眠っていたらいい。
目覚めたら、君が好きな全てで、
世界が変わっているから。

欠けた月の裏側でほら、唄う声が君まで届いた?

最終電車はもう、
夜のはじっこに
たどり着く。

たどり着く。
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