袖摺坂

すわり直して 盃ふせて
俺の女房に なれと云う
何を云うのよ からかわないで
肩であまえて 戯けても
笑い流せず 目が濡れる
袖摺坂の あゝ夢しぐれ

同じ故郷の 生まれと知れば
他人行儀も 初めだけ
いつも外見は あいそが悪い
そんな人ほど 裏がない
だから人にも あたたかい
袖摺坂の あゝ夢あかり

酔ったふりして じゃけんに渡す
母の形見と いう指輪
「あなたらしいわ・・・」思わず泣けて
濡れて小走る 裏通り
あなたに駈け寄り 傘をさす
袖摺坂の あゝ夢しぐれ
×