一本の傘

あの日は雨が降っていた
君とわかれた交差点
ひとつの傘にはいったけれど
かわすことばもなくなって
どうしてあともおわないで
後姿を見送ったのか
あの日は街が泣いていた
雨があまりに細すぎて

ひとはだまってすれちがい
駅のホームへのぼっていく
電車はガードをゆらしながら
頭の上を通りすぎる
にぎりしめてもにげるなら
恋よ思い出もつれてって
さよなら君のぬくもりよ
さよなら僕のあつい心

あの日は雨が降っていた
霧のような雨だった
傘を持つ手はぬらしても
涙をかくすには細すぎて
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