晩夏

朝に真白(ましろ)き 花をつけ
夕べにくれない 酔芙蓉
生きもせず 死にもせず 影をやつして
燃ゆる身体は 姫蛍(ひめぼたる)
あなた恋しと 月に泣く

情(じょう)のぬくもり 一夜花(ひとよばな)
残る未練の 朝しぐれ
滅びゆく つかのまが いとも哀しく
切れた鼻緒(はなお)の 紙縒(こよ)り縒(よ)る
女いのちは 火のしずく

ものの見事に 咲きながら
はらり零(こぼ)れた 酔芙蓉
夜もすがら いとおしや 恋の睦言(むつごと)
夏が秋への 風になり
虫の鳴く音も 儚くて
×