記憶の水槽

大嫌いな君の靴 海に沈めてしまって もう
明日には忘れているから きっと君のことなんて

恋をしていた 飴玉のような
いつか溶けてしまうってことも思い出せなくなってさ
溺れていた 海が凍りついた朝のような痛みの中で
目を閉じて

大嫌いな君の靴 海に沈めてしまっても
なにもかも覚えている
ただ、水槽が満ちて溢れ出した

止まった時計の針、二度とは動かない心臓
あの時見えていたはずの景色ですらも灰に消えるような

恋をしていた
最後の記録で、君が煙になって冬の天井に消えてさ
凍りついた私の記憶の水槽は、今でも眠りの中だ

誰も死なない病棟のように、過去の手紙に溺れてしまえ
明日がもう来ないのならば 氷の底でさ
春を夢見るだけ

恋をしている
飴玉のように記憶の海に溶けて、全てが灰色になっても
君が笑って私の選択を許してくれる

二人は水槽で沈んでいく

さよならが言えないまま 彼女はずっと夢を見て
今日が終わってまた今日が始まる朝でも、笑うだけだった
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