恋之介旅日記

芝居打たせりゃ 街道一(かいどういち)の
粋で鯔背(いなせ)な 恋之介
ひょんなことから 大津をあとに
江戸へ江戸へと 東海道
どこにいるやら おっかさん
どこにいるやら おっかさん
一目逢いたや 旅の空

「一度でいいから おっかさんと言って
甘えてみてえなあ……。」

偲(しの)ぶ面影 笛(ふえ)の音(ね)遠く
届け都(みやこ)の その胸に
逢うも別れも 運命(さだめ)と知れば
山の鳥さえ いとおしや
夢にまで見る おっかさん
夢にまで見る おっかさん
せめて泣きたや 肩抱いて

「おいらのおっかさんって
どんな人だったんだろう。
やさしい人だったのかなあ。
もしも逢えたら、思いっきり
親孝行してえなあ……。」

箱根八里は 馬でも越すが
積もる難儀の 峠越え
泣くも笑うも 珍道中の
富士山(ふじ)に劣らぬ 男ぶり
待っていてくれ おっかさん
待っていてくれ おっかさん
雲も東へ 流れゆく
×