東京にて

あの子の顔は浮かんできても名前が思い出せないんですが

夕暮れへんろ道は鈴の音が響いていた
何時かの夏の光景

何時かこの唄をこの景色を忘れていき
何もかも思い出せずその事さえ気付かないだろう

何時だかあんず飴食べながら祭の人の海を泳ぎながら

東京にて風景が灰色に見えてしまうのは
僕の目が曇っているのだろうか

夏の陽や冬の朝や土と風なんかの匂いを
何時の間に忘れたのかもう僕には思い出せず

記憶は昨日見たおぼろげな夢のように
懐かしい面影を残すだけで思いだせず
けどそれはこの僕の体の中血に溶けて
時は過ぎ 歳をとり やがて僕の骨になっていく
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