五月已

出逢いは雨の銀座
貸してくれたの赤い傘

丁度好い貴方の眼が
雨とこゝろを攫つていつた

寄り添う黙の時
永遠に触れた氣がしたの

あの頃其れ程まで
私稚すぎたのです

確かぢや無い物故に煩くなつたの
耳に刺す『宵待草』
遣る瀬無い悲恋の歌

ふわりふわり 泛んでくる 石鹸玉の様な想ひ出
ゆらりゆらり 弾けていく 「私は幸せでした」
未だ借りた儘です
貴方の赤い傘

蕭然、興味も無いハイカラな街独り歩く
此処では何もかもが変わり続けてくのでしょうか?

居る筈も無いのに振返つて了つたのは
貴方が好きな香水覚えてたからでした

五月雨、廻り諄い貴方の優しさ泛ぶ
稚すぎて気付け無かつたのです
貴方と巡り逢つたあの場所に若し居たのが
せめて少し大人の私だつたなら
違つたのでしようか?

ふわりふわり 泛んでくる 石鹸玉の様な想ひ出
ゆらりゆらり 弾けていく 「私は幸せでした」
あの時貴方と出逢つて了つたこの場所に
借りた儘だつた赤い傘置きました
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