夏は来ぬ

卯(う)の花(はな)の匂う垣根(かきね)に、時鳥(ほととぎす)
早(はや)も来(き)鳴きて、忍音(しのびね)もらす 夏は来(き)ぬ。

さみだれのそそぐ山田に、早乙女(さおとめ)が
裳裾(もすそ)ぬらして、玉苗(たまなえ)植(う)うる 夏は来ぬ。

橘(たちばな)の薫(かお)る軒端(のきば)の窓近く
蛍(ほたる)飛びかい、おこたり諌(いさ)むる 夏は来ぬ。
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